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東京地方裁判所 昭和27年(ワ)4534号 判決

事実

原告(三井銀行)は、被告会社(共同産業株式会社)が満期以後は百円につき一日金三銭の割合による損害金を支払う約旨で、原告にあてて振出した金額十五万円の約束手形の所持人であるが、満期日に支払場所に呈示して支払を求めたが拒絶されたので手形金十五万円とこれに対する損害金の支払を求めた。これに対し被告は、原告主張の約束手形は被告会社が原告から借用した金十五万円の貸金債権支払のためのものであり、而も右債権は被告の保有していた少なくとも当時二十万円以上の価格であつた金張製品類を代物弁済として原告に交付し、原告はその三、四日後それを原告銀行雪ケ谷支店において金十三万円で他に売却して右債務に充当し、残額二万円については原告銀行側において仲介人に対する謝礼金名義で支出し、該債務を決済する話合がついたから既に消滅していると主張した。

理由

被告は時価二十万円以上の価格を有していた金張製品を代物弁済に供し若しくは弁済に関する合意により本件手形債務は消滅した旨抗争するが、右物件が本件手形金の担保に供されたことはあつても代物弁済の目的となつた事実のないことは、原告銀行雪ケ谷支店長の証言によつて明白であり、また鑑定人の鑑定結果によつてみても右物件は殆んど交換価値のないものであることが認められる事からしても、これ等の物件の提供を以て本件金十五万円の債権の代物弁済の用となし或いは被告主張のような弁済に関する話合が成立したとの事実を認める資料とはなし難いとして、原告の本訴請求を正当であると認容した。

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